
日時:2024年12月22日(日)10:00~16:00
会場:新潟日報メディアシップ2階 日報ホール
「にいがた 暮らしと伝統のものづくり」をテーマに展開してきた新潟日報みらい大学の2024年度総括イベントを12月22日(日)、新潟市中央区の新潟日報メディアシップで開催しました。総括講座では、さまざまなものづくり関連事業に携わる株式会社TIMELESS代表の永田宙郷(おきさと)さんが、持続可能なものづくりをテーマに講演。長岡造形大デザイン学科准教授の吉川(きっかわ)賢一郎さんに、昨夏に村上市で開催したフィールドワークなどの活動についてご報告いただきました。会場内では、伝統技術の体験や実演、工芸品の直売も開催。県内伝統のものづくりについて理解を深めました。

総括講座
講演『地域のものづくりの続け方』
講師/永田宙郷さん
(株式会社TIMELESS代表)
新たな価値加え変化を
地域に残っている大切なものの背中を押し、新しい価値を付け、未来につなげていきたいと思っています。伝統的工芸品などを使っている人が、作っている人に話を聞ける場や、離れた地にいる、作り手同士が交流できる場所を作るため、全国各地の作り手が集う商談会「ててて商談会」を続けて開催してきました。
そうした場で、作り手やお客さんが交流し、伝統の技術や伝統の品を生み出した地域の風土、作り手の思いなどについて話をすることが、新たなファンをつかむことにつながると思います。お客さんの「今の時代にあったこんなもの があるといいよね」といった声や作り手同士の会話の中にも、独創的な新製品を生み出すヒントがあるはずだと思っています。

本県に多くある伝統的工芸品は、長年、受け継がれてきた高度な技術で作られた希少な製品で、機能のみを追求し大量生産された製品や、美術品とは異なります。地域の生活から生まれ、長年、その土地の文化や経済と共生し、その地域の風土を背負っている品。また、忙しい現代人の心を満たし、丁寧な暮らしを考えるきっかけも与えてくれます。
作り手は、 過去と未来の間に立ち、時間を超えた価値を作っていることを自覚すべきで、足元にある工芸品を丁寧に見つめ、未来に押し上げ、つなげていく意識を持つことが大切だと思います。伝統的工芸品は、技術、材料や素材、こだわりや慣習などの蓄積、用途といった要素から構成されています。自分が携わったものづくりの例では、富山県高岡市で、らくがんを作っていた和菓子店で、木型の中の材料をラムネに変えて、ヒット商品を生み出した例があります。

要素の一つ、材料を変えて成功したケースですが、このように、まず要素の一つを変えてみることが、未来につながる新製品を生み出すことにつながると思います。
<ながた・おきさと>
1978年福岡県生まれ。金沢21世紀美術館などを経て2019年から現職。「時間を超えて求められる価値を生み出す」をモットーに活動する。12年に、全国の作り手が集う「ててて商談会」を共同設立し、継続して開催している。
活動報告
『村上木彫堆朱フィールドワークと
ワークショップでの学び』
報告者/長岡造形大学 デザイン学科准教授
吉川賢一郎さん
本年度のみらい大学でファシリテーターを務めていただいた長岡造形大デザイン学科准教授の吉川賢一郎さんに、フィールドワークやワークショップなど一連の活動についてご報告いただきました。

工芸の可能性を再認識
「工芸品を暮らしの中に取り入れ、丁寧に暮らす」をキーワードに活動を展開しました。7月には国指定の伝統的工芸品「村上木彫堆朱」のフィールドワークで、村上市内を巡りました。堆朱が生み出された環境や文化、街を知ってほしいと思ったからです。参加者は工房で作品づくりの工程について職人から話を聞き、箸を彫る作業を体験もしました。現場を見ることの大切さを再認識しました。
11月には「村上の堆朱 みらい会議」と題し、新潟市でワークショップを開催しました。学生や職人など幅広い年代の参加者が、ものづくりの視点やデザインについて意見を交わし、有意義な時間になったと思います。
漆芸作家で人間国宝の室瀬和美さんからもオンラインでご出演いただきました。「伝統は変えていかなくてはいけない。どんどん新しくして次世代につないでいく」という指摘がとても印象深かったです。
私たちは伝統工芸の背景やストーリーに、もっと目を向けるべきではないだろうか。工芸品なのか製品なのかという立ち位置についても今一度、整理する必要があるのではないかと感じました。
村上(木彫堆朱)には若手が入ってきています。職人や周囲のサポートする人たちも意識を変えることで、まだまだ進化できる可能性があると思います。

村上堆朱事業協同組合の小杉代表理事も登壇。フィールドワーク・ワークショップ
の成果を踏まえたこれからの意気込みを語った。

作り手と交流
体験・実演・ 直売会
総括イベントは「にいがた伝統のものづくりの日」と題し、会場の一角で伝統技術の体験も行いました。燕市の鎚起(ついき)銅器の老舗「玉川堂」様、村上堆朱事業協同組合様、新潟仏壇組合様にご参加いただき、来場者は工芸品の作り手からアドバイスを受けながら、ものづくりの魅力を体感しました。
体験・実演
玉川堂では、数センチ角の四角形や三角形の薄い銅板をさまざまな形の金づちなどでたたき、模様を付けて銅製のしおりを作るコーナーを開設。小学生らが思い思いに銅板をたたき、自分だけの作品作りを楽しみました。
村上堆朱事業協同組合のコーナーでは、さまざまな色で塗り重ねた桜や富士山の絵柄のはし置きやアクセサリーを、紙やすりで研いで下地の色を出して仕上げる作業を体験しました。
新潟仏壇組合の蒔絵(まきえ)体験コーナーでは、親子連れ らが小筆で木製スプーンの柄に花や動物の模様を描き、伝統技術の一端に触れました。
このほか、長岡市寺泊山田の曲物(まげもの)と、村上市の伝統織物「羽越しな布」を作る工程の実演も行いました。来場者は興味深そうに作業を見つめ、製法や素材、地域のことを尋ねるなどして作り手と交流しました。


箸置き、
アクセサリー
作り 砥ぎ体験
村上堆朱
事業協同組合



木彫りの
キーホルダー
作り
村上堆朱
事業協同組合



寺泊山田の
曲物
足立茂久商店 足立照久さん



銅製しおり
製作体験
玉川堂



オリジナル
純金まき絵
スプーン作り
新潟仏壇組合(林佛壇店)



羽越しな布
大滝ジュンコさん

直売
伝統技術の実演や体験に加え、県内に伝わる数々の伝統工芸品を普段の生活に取り入れた暮らしを提案しようと、匠(たくみ)の技が光る工芸品の直売会も行いました。
会場には村上木彫堆朱の天然漆を塗り重ねた器や繊細な彫りが施された箸、使い込むたびに色合いに深みが増し、愛着が湧く玉川堂の鎚起銅器、塗り師や蒔絵(まきえ)師の高い技術が詰まった酒器などが並び、来場者は気に入った逸品について作り手の説明にじっくりと耳を傾け、実際に手に触れるなどして伝統工芸品の価値の高さを実感していました。

村上堆朱
事業協同組合

天然木に彫刻を施し、天然漆を塗り重ね、更に繊細な彫りを加える村上木彫堆朱。伝統のデザインから新製品まで!

タクミクラフト

県内の魅力的な工芸品を発信するタクミクラフト。特別企画で「寺泊山田の曲物」「羽越しな布」の製作実演も!

新潟仏壇組合

木地師・彫刻師・金具師・塗師・蒔絵師の5職からなる新潟の仏壇。塗師と蒔絵師が手がけた製品を販売。

玉川堂

使い込むたびに色合いに深みとツヤが増し、道具を育てる楽しみや愛着がわく燕鎚起銅器をこの機会に。